今日もルノアールで

ルノアールで虚空を眺めているときに更新される備忘録

さよなら青春

7月4日。チャットモンチーのラストワンマンにあたる「CHATMONCHY LAST ONEMAN LIVE ~I Love CHATMONCHY~」に行ってきた。チャットモンチーのメジャーデビューは2005年。ファーストフルアルバム『耳鳴り』が発売されたのは2006年。当時、僕は中学生。『シャングリラ』で彼女たちを知り、ガールズバンドとの出会いも彼女たちが最初だったんじゃないかと思う。高校のときに組んだバンドで初めてコピーした楽曲は『風吹けば恋』。卒業ライブで思い出されるのは友人のガールズバンドが演奏していた『サラバ青春』。未だにチャットの楽曲を聴くと、高校時代の記憶が瑞々しく蘇る。

ドラムの高橋久美子が脱退したときには、音楽的な興味がほかに移っていたから、驚きはしたものの、そこまで強くショックを受けたわけではなかった。しかし、その後の2人体制になってから初めてのシングル『ハテナ』のMVを見たとき、気付けば号泣していた。ちょっと信じられないぐらいに。バンドにおける核となるドラムが脱退し、当然すぐさまサポートメンバーでも迎えるのかと思いきや、彼女たちは新たなメンバーもサポートも入れなかった。そして、たった2人で最高の音楽を鳴らしていた。ベースのあっこちゃんがドラムを叩いているのだから、正直うまいわけでは決してない。ドラミングの幅の狭さが、楽曲展開を制限してしまっているとも思う。それでも、彼女たちの音楽は胸を打った。なにか音楽の根源的な力にあふれている気がした。僕にとって彼女たちは、バンドマジックを感じさせてくれる数少ないバンドなのだ。

そんな彼女たちの完結。過去のヒットナンバーに終始することなく、新譜中心のセットリストやストリングスを迎えてのライブというところに、なにか彼女たちの音楽に対する態度が強く表れていたように思う。あくまで最新系の彼女たちを見た。それでも、後半は過去の楽曲も演奏されるようになり、『風吹けば恋』『ハナノユメ』『シャングリラ』などを聴いていると、自然と自分の過去に頭がトリップする。高校時代の記憶と目の前の光景がクロスする。最後は、やはりと言うべきか『サラバ青春』。大槻ケンヂか誰だったかが、青春の終わりは学生時代に好きだったバンドが解散するときに訪れる、という言葉を残していたと記憶しているが、まさにその通り。気付けば20代も後半に差し掛かり、「青春」なんていう言葉を想起することも少なくなった。青春をモチーフにした楽曲が刺さることも、最近ではほとんどなくなった。しかし、『サラバ青春』を聴けば、すぐに青春時代である高校時代を思い出せる。そして、それによって現在の状況と、当時思い描いていた未来との距離感に驚く。自分の原点はどこにあるのか。このライブを通じ、僕は自分の足元を見つめ直した。そして、そんな機会を与えてくれる彼女たちは、もうすぐいなくなるのだ。青春の終わり。

途中、最近の動向を追えていない僕は、ハードすぎるドラミングに巨大なクエスチョンマークが灯った瞬間もあったが……最初と最後、ステージ上にいたのは2人だけだった。それが、全てだと思う。チャットモンチーは、何でもない地方出身の女性3人(2人)が、ひとたびバンドを組み、音楽を鳴らせば、それまでの世界を変えられることを教えてくれたんだ。ロックンロールマジックの体現者・チャットモンチー。さよなら。